1999年7月23日金曜日

第28回 国体を女子サッカー普及のために

 暑い夏の日の練習や単調なマシントレーニングをしているとき、わたしはいつも高校時代を思い出す。そうすると、どんな練習も楽しく思えるのだ。

 もう20年以上も前、高校生のわたしは、陸上競技部で短距離の選手だった。練習は、グラウンドを使える日は本当にただひたすらトラックを走った。距離とスピードの変化こそあるが、練習の最初から最後までずっと走っていた。天気が悪くてグラウンドを使えない日はウェートトレーニングと校舎の中の階段を何本も駆け上がる練習だ。それらはただただつらく、苦しいものだった。わたしはいつも頭をからっぽにして、練習を消化することだけを考えていた。そんな態度だったから、わたしは全国レベルの選手にはなれなかったのだろう。

 わたしの高校から自転車で5分のところに立派な県営総合競技場があった。当時としては最新の全天候性のトラックと芝生のフィールドだ。わたしが高校1年生のときに全国高校総合体育大会(高校総体)、高校3年生のときに国民体育大会(国体)が地元で開催された。メイン会場として開会式や陸上競技を行うために、県営総合競技場を新しく建設していたのだ。

 国体開催のおかげで、わたしのようなレベルの選手でも、公式大会だけでなく記録会や練習会までも最新の競技場で走ることができた。練習はつらかったが、試合になると一流選手と同じような雰囲気でトラックを走ることができた。そして、国体強化選手として招待された有名選手と同じトラックを走ることもあった。そういう体験は、高校3年間競技を続けていく原動力にもなっていたように思う。

 国体というのは、わたしの高校3年間を通じて、県をあげて準備され、全国の競技者を迎える大きなイベントだったことは間違いない。

 女子のサッカーが1997年から「成年女子サッカー」として国体の正式種目となった。ようやく日本体育協会に競技スポーツと認められたという感慨はあるが、この大会の性質はまだよくわからない。原因のひとつが以下のような選手資格にあった。

アマチュア選手であること。
高校卒業以上の年齢であること。(成年女子ということから)
Lリーグ枠は3人まで。(Lリーグのチームに所属する選手もしくはLリーグのチームをやめても3年以内の選手は3人までしか登録できない)
当該都道府県に在住もしくは在勤在学していなければならない。(これは日本サッカー協会の登録とはまったく別の考え方によるものである)
1チームの登録が選手14人と監督1人(監督と選手を兼ねてもよい)である。

 は問題ないとして、は現在の女子の登録制度からみて、高校卒業以上というのは適当ではないと思う。男子は1種~4種という年齢別登録があるなかで、少年と成年男子のふたつの部門で行われている。女子はひとつの部門しかないのだから、競技人口や競技レベルを考えても、「女子」として中学以上の年齢とするのが妥当だろう。

 が国体というものを非常にあいまいな大会にしていたと思う。しかし、ことしからはLリーグの選手も人数制限なく登録できることになった。だが実際、どんなチームが出てくるかはわからないが、シーズン真っ最中のLリーグのチームが、リーグ戦の合間に、最高4日連続で試合をする大会に実質15人の登録選手で参加することは考えにくい。ほとんどのチームは参加を考えていないだろう。

 それよりも、Lリーグをやめた選手に何の制限もなくなったことが大きな意味をもつと思う。Lリーグには全国から良い選手が集まっている。しかし、Lリーグをやめたあと地元に帰っても、受け入れられるチームがほとんどないのが現状だ。とくにことしは、Lリーグから4チームが撤退したことにより、多くの選手が移籍し、多くの選手がLリーグを離れた。その選手たちをていねいにすくい上げて、意欲をもちながらサッカーを続けられる環境を与えることができれば、これからの国体の意味は大きい。

 そのためにはにも問題がある。
 わたしのチームは東京都協会に登録している。チームの構成メンバーはその一員であるにもかかわらず、東京都国体選抜に選ばれる資格のない者が4人もいる。住所も勤め先も学校も東京都にないからだ。

 逆に、どのチームにも所属していなくても、住所さえ東京都にあれば選ばれる資格がある。サッカーはチームがなければできないスポーツであるにもかかわらずだ。
「Lリーグをやめた選手が、新しいチームでやる気はないが国体だけならやってもいい」という考えがまかり通ることになる。

 国体は、日本のアマチュアスポーツの総本山である日本体育協会が開催する大会である。だから、日本サッカー協会という枠にとらわれず、広く国民が参加できなければならないものなのだそうだ。なかなか日本サッカー協会の考えだけで進めるわけにはいかないのが現状だ。変則的な12チームの参加数とか、選手14人、監督1人という登録人数とか、すべて日本体育協会の枠組みからくるものなのだ。

 日本体育協会が広く日本国民に競技スポーツを奨励する趣旨に文句はない。しかし、いろいろな競技があり、それぞれの競技には違った考え方があり、理念のようなものがあるのではないだろうか。

 これからの国体の女子サッカーには、底辺拡大のきっかけにつながる大きなイベントになる可能性があると思う。まず日本サッカー協会が女子サッカーの普及を真剣に考えることが必要だ。そして日本体育協会に理解を得られるように働きかけてほしい。

 わたしのチームから3人の選手が東京都国体選抜候補として、8月21日から23日に行われるミニ国体(関東地区予選)に向けてがんばっている。彼女たちのがんばりは、わたしたちチームメートに大きな勇気を与えてくれる。