東京は、先週梅雨入りしてからというものずっと雨が続いている。雨に濡れたあじさいの花は日本のこの季節をよく表している。それとくらべて毎夜テレビで見るヨーロッパはからっと乾いた晴天で、それだけで別世界のように感じられる。
いま、ヨーロッパ選手権のまっただ中。完全な寝不足状態だ。現地時間で午後6時と午後8時45分のキックオフは、日本では午前1時と午前3時45分。これが毎日続く。昼間仕事をもつ身としては、ビデオに録画しておいて翌日の夜に見る、というのが見識ある行動かもしれない。しかし、夕刊に結果が出てから見るのでは、やはりつまらない。結局、どちらかのカードを選んで、1試合を生中継で、1試合をビデオで、ということになる。これが最大限の譲歩なのだ。
「寝不足だよね」ではじまる会話は、「ひとまわり見たけれど、予想以上にフランスがいいんじゃない? ジダンが絶好調だもの」「うれしいことにポルトガルがいいよね。このサッカーで勝ち上がってくれると楽しいよね」「ベッカムのキック見た?!」「スペインはまた期待はずれで終わっちゃうのかな」と、とどまることを知らない。ワールドカップに次ぐ、至福の1カ月間になるのだ。
それもこれも、毎日ほとんどの試合を生中継してくれるWOWOWのおかげだ。しかし、いろいろな事情でWOWOWが見られないサッカーファンの人たちはどんなに悔しい思いで1カ月を過ごすことだろう。WOWOWはだれもが見られる地上波ではないからだ。
わたしは先日、その悔しさを味わった。日本代表がモロッコで戦ったハッサンⅡ世国王杯だ。放送権はフジテレビとスカイパーフェクTV(スカパー)がもっていた。
民放放送と衛星放送が同じ試合を放送するなら、わたしは迷わずCMのはいらない衛星放送を選んできた。BS、WOWOW、ケーブルTVとどん欲にアンテナを引き、契約をしてきたが、スカパーだけはどうしても方角の問題で、アンテナをつけることができず契約できないでいた。それでもフジテレビが放送してくれるのなら、この際CMは目をつぶり、生中継でなくて1時間遅れの放送でも、自分に生中継だと言い聞かせて見た。
試合は予想以上に日本代表がすばらしく、先手先手をいく攻めでフランス代表を大いにあわてさせた。結局2-2の引き分けで、PK戦で決勝進出は逃したものの、わたしは試合の最初から最後まで興奮して見続けた。
3位決定戦はジャマイカとの対戦になった。98年ワールドカップ・フランス大会のときの悔しい記憶をだぶらせて、これも見逃せない一戦だとだれもが思っていたに違いない。しかし、その日の朝刊のテレビ欄を見てわたしは愕然とした。深夜2時半のキックオフの時間にフジテレビは映画を放送するというのだ。目をずっと下に移してもサッカーの文字は出てこなかった。
その日の新聞にはフランス戦のフジテレビの視聴率が、深夜から未明の放送としては異例の6.7%(瞬間最高視聴率は8.1%)、視聴占拠率は平均70.7%(PK戦にはいった4時前には82.2%)であったことが大きく報道されていた。「ワールドカップ・チャンピオンとの対戦であり、大きな関心を集めることは予想していました。だから放送権をとったのです」と、フジテレビの担当者のコメントも載せられていた。
わたしはフジテレビに電話した。
「きょうのジャマイカ戦の放送は?」
「きょうはスカパーだけです。フジテレビではあすの深夜に放送します」
「あすって、きょうの深夜、日付が変わったあすじゃないんですか?」
わたしは精いっぱいの皮肉を込めて言ったつもりだったが、
「いいえ違います」のひとことで片づけられた。
最後まで「きょう放送できなくて申し訳ない」という言葉は聞かれなかった。
その日わたしは人の迷惑もかえりみず、スカパーと契約している友人に電話をかけまくり、メールを送りまくった。録画してもらったビデオを朝6時に借りに行く約束をとりつけたりしたが、結局は深夜に車を走らせて、生中継で見ることになった。
前半はやきもきしながら見たが、後半開始直後に城のすばらしいゴールが決まり、そのあとは多彩な攻めのオンパレードだった。結局4-0の勝利に大満足してうちに帰った。前日の朝のいやな気持ちも吹っ飛んでいた。
いま、2002年のワールドカップの放送権の問題がいろいろ言われている。そして先日、2001年から8年間のワールドカップ・アジア最終予選の放送権をテレビ朝日が獲得したと大きく報道されていた。
放送関係者の方々はぜひ知っていただきたい。サッカーファンはできるだけリアルタイムで、できるだけ試合に忠実な放送を見たいと思っている。そして、サッカー放送はほかのだれのものでもない、ファンのものだということを。自分のところの都合でもし放送ができないときは、ほかの放送局にゆずって放送してもらうくらいのことをしてもらいたいのだ。放送する権利を得るということは、放送する義務をも負うことなのだ。
テレビはイタリア-ベルギーの試合を映し出している。さあ、どんな試合を見せてくれるのだろうか。
いま、ヨーロッパ選手権のまっただ中。完全な寝不足状態だ。現地時間で午後6時と午後8時45分のキックオフは、日本では午前1時と午前3時45分。これが毎日続く。昼間仕事をもつ身としては、ビデオに録画しておいて翌日の夜に見る、というのが見識ある行動かもしれない。しかし、夕刊に結果が出てから見るのでは、やはりつまらない。結局、どちらかのカードを選んで、1試合を生中継で、1試合をビデオで、ということになる。これが最大限の譲歩なのだ。
「寝不足だよね」ではじまる会話は、「ひとまわり見たけれど、予想以上にフランスがいいんじゃない? ジダンが絶好調だもの」「うれしいことにポルトガルがいいよね。このサッカーで勝ち上がってくれると楽しいよね」「ベッカムのキック見た?!」「スペインはまた期待はずれで終わっちゃうのかな」と、とどまることを知らない。ワールドカップに次ぐ、至福の1カ月間になるのだ。
それもこれも、毎日ほとんどの試合を生中継してくれるWOWOWのおかげだ。しかし、いろいろな事情でWOWOWが見られないサッカーファンの人たちはどんなに悔しい思いで1カ月を過ごすことだろう。WOWOWはだれもが見られる地上波ではないからだ。
わたしは先日、その悔しさを味わった。日本代表がモロッコで戦ったハッサンⅡ世国王杯だ。放送権はフジテレビとスカイパーフェクTV(スカパー)がもっていた。
民放放送と衛星放送が同じ試合を放送するなら、わたしは迷わずCMのはいらない衛星放送を選んできた。BS、WOWOW、ケーブルTVとどん欲にアンテナを引き、契約をしてきたが、スカパーだけはどうしても方角の問題で、アンテナをつけることができず契約できないでいた。それでもフジテレビが放送してくれるのなら、この際CMは目をつぶり、生中継でなくて1時間遅れの放送でも、自分に生中継だと言い聞かせて見た。
試合は予想以上に日本代表がすばらしく、先手先手をいく攻めでフランス代表を大いにあわてさせた。結局2-2の引き分けで、PK戦で決勝進出は逃したものの、わたしは試合の最初から最後まで興奮して見続けた。
3位決定戦はジャマイカとの対戦になった。98年ワールドカップ・フランス大会のときの悔しい記憶をだぶらせて、これも見逃せない一戦だとだれもが思っていたに違いない。しかし、その日の朝刊のテレビ欄を見てわたしは愕然とした。深夜2時半のキックオフの時間にフジテレビは映画を放送するというのだ。目をずっと下に移してもサッカーの文字は出てこなかった。
その日の新聞にはフランス戦のフジテレビの視聴率が、深夜から未明の放送としては異例の6.7%(瞬間最高視聴率は8.1%)、視聴占拠率は平均70.7%(PK戦にはいった4時前には82.2%)であったことが大きく報道されていた。「ワールドカップ・チャンピオンとの対戦であり、大きな関心を集めることは予想していました。だから放送権をとったのです」と、フジテレビの担当者のコメントも載せられていた。
わたしはフジテレビに電話した。
「きょうのジャマイカ戦の放送は?」
「きょうはスカパーだけです。フジテレビではあすの深夜に放送します」
「あすって、きょうの深夜、日付が変わったあすじゃないんですか?」
わたしは精いっぱいの皮肉を込めて言ったつもりだったが、
「いいえ違います」のひとことで片づけられた。
最後まで「きょう放送できなくて申し訳ない」という言葉は聞かれなかった。
その日わたしは人の迷惑もかえりみず、スカパーと契約している友人に電話をかけまくり、メールを送りまくった。録画してもらったビデオを朝6時に借りに行く約束をとりつけたりしたが、結局は深夜に車を走らせて、生中継で見ることになった。
前半はやきもきしながら見たが、後半開始直後に城のすばらしいゴールが決まり、そのあとは多彩な攻めのオンパレードだった。結局4-0の勝利に大満足してうちに帰った。前日の朝のいやな気持ちも吹っ飛んでいた。
いま、2002年のワールドカップの放送権の問題がいろいろ言われている。そして先日、2001年から8年間のワールドカップ・アジア最終予選の放送権をテレビ朝日が獲得したと大きく報道されていた。
放送関係者の方々はぜひ知っていただきたい。サッカーファンはできるだけリアルタイムで、できるだけ試合に忠実な放送を見たいと思っている。そして、サッカー放送はほかのだれのものでもない、ファンのものだということを。自分のところの都合でもし放送ができないときは、ほかの放送局にゆずって放送してもらうくらいのことをしてもらいたいのだ。放送する権利を得るということは、放送する義務をも負うことなのだ。
テレビはイタリア-ベルギーの試合を映し出している。さあ、どんな試合を見せてくれるのだろうか。