2000年5月12日金曜日

第44回 女子にもシニア大会を


「おっ、久しぶり」
 冷たい雨のなか、声をからして応援していると、突然声をかけられた。

 わたしには、自分のチームのほかにもうひとつチームがある。東京都男子社会人リーグ3部に所属するチームだ。17年前から、自分のチームの予定がないときは、練習、試合、合宿にと参加させてもらっている。メンバーは20代から60代と幅広く、自分のチームでは飛び抜けて最年長のわたしが平均年齢くらいなのも心地よい。

 男子のチームなのだが、シニアの大会に参加するときには、わたしも試合に出ることができる。先週末、そのチームが茨城県波崎町で行われたシニアカップに出場した。数年前から毎年開催されているもので、基本的には40歳以上の大会だ。ただし、試合に出ている11人中3人までは36歳から出ることができ、女子なら人数も年齢も制限がないのだ。

 わたしは久しぶりのオフの日曜日にこの大会に参加していた。前日からかなりの雨が降っており、非力なわたしは試合に出ても役に立ちそうもなく、もっぱら応援に精を出していた。

 声をかけてきたのは、大学時代のコーチだった。十数年ぶりに会うコーチは、いまも東京都社会人リーグで大学のOBチームの一員としてプレーしており、この大会には別のシニア・チームで参加しているという。

 次に行われた試合は、どちらのチームにもかつて日本リーグでプレーしていた選手が何人もおり、優勝候補同士の屈指のカードだった。そのなかでコーチは中心選手として活躍していた。

 この大会では、昔の有名選手も名もなき選手も同じように必死でボールを追い、勝負にこだわってプレーしている。そして、だれもがこの大会を楽しみにしている感じが伝わってきて、とてもうらやましく思った。

 しかし女子はというと・・・。数年前のことだ。かつてのチームメートたちが、子育ても一段落したのでまた昔の仲間とサッカーがやりたい、とチームをつくった。いまさら中学生や高校生といった元気な若者と試合をする気はない、と一般リーグではなくママさんリーグに参加しようとした。しかし、拒絶された。

 そのころの東京都ママさんリーグの参加資格には、「20歳以上の経産婦もしくは35歳以上の女子」というほかに、「全日本選手権に出場経験のある者は各チーム1名まで」という項目があったのだ。残念ながら、そのチームは第3回全日本選手権大会で準優勝したときの選手たちが中心となってつくったチームだった。

 いまでこそ2番目の項目はなくなっているが、「ママさんリーグ」という名称自体にわたしは違和感を感じずにはいられない。

「ママさんサッカー」というのは少年チームの母親たちが、子どもが楽しそうにサッカーをしているのを見て、自分たちもボールをけりたいと始めたのがきっかけなのだろう。その歴史は古く、果たしてきた役割はとても大きい。

 しかしいま、あらたに「シニア」というカテゴリーを考え始めてもいいのではないだろうか。現在、その年齢層の人が、かならずしも母親という立場でサッカーをしているわけではない。むしろ、「一般」か「ママさん」かの選択に、二の足を踏んでしまう人が多いのではないか。

 わたしはここで「女子シニア(30歳以上)の大会を開催すること」を提案したい。それが「いちどサッカーから遠ざかっていたが、またボールをけりたい人」や「30歳を過ぎてサッカーに興味をもった人」のあらたな選択肢になると信じて疑わないからだ。

 シニアカップに参加し、何人もの古いサッカー友達と会い、なつかしく話をした。そして、冷たい雨の降るなか、彼らが楽しそうにボールをける姿を見ながらこんなことを考えた。