これが最後の暑さだとばかり、夏の太陽が強い日差しを送り続けている。あと1週間もすれば、朝晩には風も出てくるのだろう。サッカーをやる身にはつらい季節だが、もう少しの辛抱だ。
夏を境にして、シーズンの前半が終わる。
昨シーズンは筋肉のトラブルに悩まされ続けた。背筋や大腿四頭筋や大腿二頭筋にいつも違和感があって、爆弾をかかえている感じだった。それを克服するために、ことしのシーズン前からプールのトレーニングを始めた。自己流ではあるが、筋肉をほぐすことと水の抵抗を利用した筋力アップというふたつの相反すると思われる要素を、きちんと分けながら強いイメージをもって取り組んだ。
ただ、マシントレーニングほど体型に変化が表れるわけではないので、このまま続けていいのかどうか半信半疑だった。体重が増えるわけでも減るわけでもなく、体脂肪率が変化するわけでもなかった。
しかし、シーズンを半分終えてみて、ここ数年のなかで、筋肉の状態がいちばんいいということを実感している。筋肉をほぐすという点で、プールのトレーニングは明らかに効果があった。長年悩まされてきたヒザ関節の痛み、足の指の疲労骨折、いろいろな筋肉の痛み、肉離れの恐怖などから、いまは開放されている。
本当はもっともっとサッカーがうまくなりたいと思っていたのに、ケガのことばかり気になった。痛みの出ないテーピングをいろいろ試したり、痛くないけり方を工夫したり、痛みが消えるトレーニングを研究したりした。そうしなければ、続けられなかったのだから仕方なかったが、ときどき何を目的にしているのかわからなくなるときがあった。
先日、ジュビロ磐田の中山選手のインタビュー記事を読んだ。
「現在の力を維持しようと思ったときに、下降が始まっている。常に上へ上へと目指して、ぎりぎりのところまで自分を追い込んで、やっと維持できるんです」
わたしは、ずっと維持しようと努力してきたけれど、どんどん下降線をたどっていたんだなと思った。だが、いまからでも遅くはない。痛みから開放されているいまがチャンスなのだ。
たとえば、長い距離の強いパスを正確にけりたいと思う。それができれば、自分自身のプレーの幅が広がり、チームとしても一歩前進するきっかけになるかもしれない。必要なのは強い筋力と体全体のバランスだ。こういった具体的な目的やプレーをイメージして、筋力アップのトレーニングをしていきたいと思っている。
そしてわたしには、もうひとつ明確なイメージがある。
さきごろ行われた女子ワールドカップ決勝で、アメリカが優勝した瞬間、最後のPKを決めたブランディ・チェイスティンが思わずゲームシャツを脱いで喜びを爆発させた。その姿はテレビニュースや新聞で大きくとりあげられ、話題になった。
わたしは新聞に載ったその1枚の写真を見ただけで感動した。そこには、女子サッカー選手の理想の体があった。余分な贅肉はまったくついておらず、筋肉が偏ってついていることもない。バランスよく研ぎ澄まされた肉体だった。
この体が世界の頂点に立つプレーを生むのだ。
チャスティンの体を頭に描きながら、ひとつひとつのプレーとひとつひとつの筋肉を重ね合わせて、トレーニングする。
10月から始まる後期リーグに向けて、わたしは体の改造を始めようと思う。
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